お年寄りの気持ちについて その2

1. 「老人とは、何をとらえて何をさしているのか基準がない」について

老人は、生物学的、生理学的、心理学的側面に相当の個人差があり、一律の年齢で区分することは困難である。このため、老人福祉法ではその対象となる老人についての定義は置かれておらず、その解釈は社会通念にゆだねられている。

※社会通念とは、社会の一般的な考え方、常識。

2. 老人(お年寄り)を机上辞典で調べると

老人=年をとった人、としより  年寄り=年をとった人、(昔)武家の政務にたずさわった人・大名の家老  ということなので、世間一般の人々は何歳からが老人年齢と思っているのか考えてみる。

3. 年齢から老人を区分する場合、社会通念上の老人年齢は変化する

第1回で示した「何歳から老後生活を始めたか?」を参考にしてみると、老後生活の始期は平均寿命が伸びたので、下表のように変わったと思われる。

30年以上前、デイサービス利用者に「何歳からが老人と思いますか?」と聞いたところ、一様に「75歳から」と答えている。これは当時の男性の平均寿命とほぼ同じである。現在、男性の平均寿命である80歳くらいが社会通念としての老人年齢でしょうか?

4. 山梨医大紀要 第15巻(1998) Aging の社会心理学的考察(渋谷昌三)

(1) 老年期研究の草分けである橘覚勝(1958)は、日本の80歳以上の人に「何歳くらいで、お年寄りになった、とお気づきになりましたか」との質問をしている。それによると、50歳代が約5%、60歳代が約20%、70歳代が約50%、80歳以上が約25%だった。

(2) 山添正(1984)は、山梨県内の20歳代から50歳代を対象に「老後の生活」の調査を行っている。「老後の生活は何歳から始まるか」については、60歳が30%、65歳が29%、70歳が22%で、老後は60、70歳あたりから始まると考えている人が多いことが分かった。

(3) Schonfield(1982)は老人イメージの調査を行っている。その主な結果は 次のようなものである。なお、カッコ内の数字は「その通り」と答えた回答者の割合である。 ①人は年をとると、信心深くなりやすい(77%)。②ほとんどの老人は孤独で寂しい(66%)。③老人は頑固になりがちである(65%)。④ふつう老年期はのどかな時期である(52%)。⑤老人はほとんど性に興味を示さない傾向がある(47%)。⑥老人が新たに技能を獲得するのは非常に困難である(46%)。 さらに、これらの質問にたいして、「50%の例外が認められる」と回答した人の割合が調べられている。年齢別に見ると、回答者の年齢が25歳以下では26%の例外が認められると回答している。同様に、25~44歳では39%、45~64歳では38%、75歳以上では58%などとなっている。 つまり、若い世代ほど例外を認める割合が低くなることから、若い世代ほど高齢者に対しての社会通念や先入観にしばられている人が多いといえる。

5. 老人(お年寄り)の気持ちは「あなたが、年をとったらわかる」

やはり、若いときに推察したお年寄りの気持ちと(自身が)年をとってからの気持ちには、相当ずれがあるようです。

社会通念という(若者の常識と一般的な常識に相当ずれのある)曖昧な概念により、(年齢のみによっても)老人を区分することは所詮無理な(無用な)ことでした。

「人の気持ちやこころは、他人にはわからないことで暮らしていける」